表題番号:2004A-142 日付:2005/03/27
研究課題新規グルコース転移酵素の機能解析と有用α-グルコシド生産への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 桐村 光太郎
研究成果概要
 生体触媒を利用した立体選択的な反応の開発には新規かつ優良な酵素が必要とされる。著者らは新規なグルコース転移酵素をXanthomonas campestris WU-9701株が生産することを発見し、これを利用した一段階の水系反応により効率的なメントール(清涼剤)の酵素的α-グルコシル化に初めて成功した。すなわち、メントールとマルトースを含む水溶液を40度で振とうするだけで、メントールα-グルコシド(α-MenG)を約100%の収率で選択的に合成することを可能にした(J. Biosci. Bioeng., 89, 138-144 (2000))。α-MenGは口中に含むと最初にほのかな甘味を示し、数分後に清涼感を発する性質を有しており、新規な食品素材として期待される。また、飽和濃度を越えてα-MenGが生産されるためこの水系反応は結晶蓄積型の反応として進行し、ろ過するだけでα-MenGを容易に回収することが可能であった。当該酵素を利用した反応は、α-アルブチン(化粧品の美白剤)やオイゲニルα-グルコシド(育毛剤)などの各種有用α-グルコシドの生産にも応用可能であった(J. Biosci. Bioeng., 96, 199-202 (2003))。本研究では、遺伝子をクローニングし塩基配列を決定して当該酵素の一次構造を明らかにするとともに、組換え酵素を利用した効率的なα-グルコシド生産系の開発を行った。当該酵素を精製しそのN末端アミノ酸配列および内部アミノ酸配列情報を基にしてプローブを作製し、X. campestris WU-9701株のDNAライブラリーに対してコロニーハイブリダイゼーションを行い、目的の遺伝子(xgtA)をクローニングした。xgtAは538アミノ酸残基から成る57,000 kDaのタンパク質をコードしており、これは精製酵素の分子量と一致していた。xgtAから推定される一次構造にはα-アミラーゼに共通して存在するモチーフが見出されたが、既知の酵素とは30-35%の相同性を示す程度で、とくにC末端側70アミノ酸残基で構成される領域については他の酵素との相同性は見出されなかった。さらに、xgtAを大腸菌において高発現させることによって、X. campestris WU-9701株と比較して約140倍の比活性を得ることに成功した。この無細胞抽出液を利用してα-MenGやα-アルブチンの生産を行った場合には高収率を維持して短時間で反応が終了することを確認し、効率的なα-グルコシド生産系を確立することに成功した。