表題番号:2004A-137 日付:2005/04/08
研究課題3原色高輝度発光制御シリコンナノクリスタル光デバイス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 加藤 勇
研究成果概要
二重管式同軸線路型マイクロ波プラズマCVD装置において、シランガスを材料ガスアルゴンガスを放電ガスとして用い、チャンバー内を高ガス圧250mTorrにすることでa-Si:Hナノボール膜を作製してきた。作製した膜に加熱酸化処理を行うことにより、発光波長約780nmのPLが観測される。X線回折より、作製したa-Si:Hナノボール(~20nm)の内部にSiナノクリスタル(~5nm)が存在することがわかっている。酸化することによりSiO2中にSiナノクリスタルが埋め込まれている状態になり、発光性準位が生じ、PLが観測されると考えられる。また、a-Si:Hナノボール膜の膜質や発光特性に与える影響について検討してきた。成膜後に、HF処理や純酸素中で高温酸化処理を行うことで、発光波長を約780nmから約500nm程度までブルーシフトさせることができた。また、TEMおよびX線回折によりSiナノクリスタルの粒径を調べた結果、以前より小さい値(~3.4nm)を示した。この結果、発光波長はSiナノクリスタルの粒径に依存していることが分かった。
 Ⅰ a-Si:Hナノボール膜からのPL発光波長制御法の確立
  a-Si:Hナノボール膜を酸化後、波長325nmのHe-Cdレーザを照射することで、室温でPL (フォトルミネッセンス)が観測されることは確認されている。これまでに作成してきたa-Si:Hナノボール膜がもつPLピーク波長は1)約780nm~700nm(2)約580nm~610nm(3)約500~510nmの3種類に分類できる。これまでの研究で、これらのPLピーク波長は、Siナノクリス タルの粒径に依存するものであることがわかっている。この粒径を成膜・処理方法によって詳細に制御することで、PL発光波長を制御する方法を確立した。
 Ⅱ a-Si:Hナノボール膜からのPL発光原理の検討これまでに作成してきたa-Si:Hナノボール膜から得られるPLピーク波長は、膜内部に含まれるSiナノクリスタルの粒径に依存することがわかっている。そのPL発光スペクトルを、複数のガウス曲線の合計で近似する。そして、各々のガウス曲線の中心波長を、前述のPL ピーク波長とSiナノクリスタルとの関係から粒径を算出し、それぞれのデータを統計的にまとめることによってSiナノクリスタルの粒径分布はディスクリートであるということがわかった。