表題番号:2004A-131 日付:2017/03/23
研究課題低温ストップトフローNMR法によるπ配位オレフィン白金(Ⅲ)錯体の検出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 石原 浩二
(連携研究者) 大学院理工学研究科 客員研究助手 岩月 聡史
研究成果概要
 酸性水溶液中において、HH型およびHT型白金(III)二核錯体とオレフィンを反応させると、白金-炭素結合を有するs 錯体を生成することがわかっている。われわれは、これまで、この反応の反応機構論的研究を行うことにより、この反応に対して、オレフィンが白金(III)二核錯体にp配位した反応中間体を経てs錯体を生成する、という反応機構を提案してきた。
  本研究では、分光学的手段で反応中間体を直接検出するために、まず、有機溶媒に可溶なHH型白金(III)二核錯体を合成し、次に、その錯体とオレフィンとの反応を-30? ~-70?の低温下で、ストップトフローNMR装置を用いて追跡することを試みる。
 (1) [PtIII2Me4(a-py)2(py)2] (a-py = a-pyridone, py = pyridine) の合成と反応
 テトラクロロ白金(II)酸カリウムを原料として、順次、硫化ジエチル、メチルリチウムなどを反応させ、片方の軸位に硫化ジエチルが配位した a-ピリドン架橋のHT型白金(III)二核錯体 (a) を合成した。この錯体に過剰のピリジンを反応させ、上下の軸位にピリジンが配位したHT型白金(III)二核錯体 (b) を合成し、カラムを用いて単離した。
 二核錯体 (a) および (b) の軸位の配位子を置換活性な溶媒分子に換えようと試みたが、このような反応は全く進行しなかった。そこで、二核錯体 (a) および (b) に直接オレフィンを反応させたが、結果は同様であった。
 現在、ケト、エノールの互変異性を利用して、エノールのみが白金(III)錯体と反応することを示すことにより、間接的にp配位反応中間体の存在を示すことを試みている。
(2) 低温ストップトフロー測定技術の確立
 本研究課題に必要不可欠な低温下における迅速混合技術を確立するべく、低温ストップトフロー分光装置を開発し、-70?までの温度条件下で分光測定を実現した。本装置により、例えば、これまで検出が不可能であったボロン酸化合物と二座配位子の反応における活性中間体の吸収スペクトルの検出に成功した。本測定技術は低温ストップトフローNMR測定に直接応用することが可能である。