表題番号:2004A-108 日付:2005/03/16
研究課題退化する非線形偏微分方程式の解の研究とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 助手 高木 悟
研究成果概要
 非線形偏微分方程式の一例である退化放物型-双曲型方程式の再正規化消散解について研究した.
 保存則における再正規化消散解については,2004年に小林和夫教授との共同研究でその解を構築し,Benilan らにより導入された再正規化エントロピー解との同値性を示した.本研究ではその結果を,保存則を含む退化放物型-双曲型方程式へ拡張することを試みた.この再正規化消散解の概念は,緩和系モデルにおいて再正規化エントロピー解よりも扱いやすい構造をしているのが特徴である.退化放物型-双曲型方程式における緩和系モデルとしては,一般化ステファン問題などがあり,生物学上の応用面にも優れているため,この理論の拡張をすることは有益である.
 退化放物型-双曲型方程式における再正規化消散解の構築については,Perthame and Souganidis により有界な場合に限った消散解の概念が導入されているので,それを拡張した.一方,Bendahmane and Karlsen により,再正規化エントロピー解の存在性と一意性が証明されているので,この解との同値性を証明した.この際,いわゆる2階の拡散項の影響で Dirac mass が現れるが,連続関数による畳み込みを行うことにより,その困難を克服した.あとは Kruzkov による変数二重法を巧みに適用することにより,再正規化消散解と再正規化エントロピー解の同値性が証明できた.この応用例として,1階と2階の緩和系モデルそれぞれにおいて,再正規化消散解の一意存在性を証明した.この結果は国際雑誌“Communications in Applied Analysis”に掲載される.また,2004年11月に行われた国際会議“The Third Polish-Japanese Days”において講演をし,レビューを受けた.2005年3月に行われる日本数学会年会においても講演する予定である.