表題番号:2004A-090 日付:2007/03/19
研究課題メダカの発生におけるポリコーム相同遺伝子oleedの機能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 東中川 徹
研究成果概要
細胞メモリーに関わるポリコーム遺伝子群ESC-E(Z) 複合体について、メダカをモデルとして機能解析を行いhedgehogシグナリングへの関与を明らかにした。機能欠損が致死になるため、他のシステムでは困難であったESC-E(Z)複合体の機能解析を、morpholino antisense oligo (MO)を用いたノックダウンの手法により可能にした。oleed(esc相同遺伝子)およびolezh2 (E(z)相同遺伝子)のノックダウン実験において単眼奇形cyclopiaを見いだした。さらに、cyclopiaがESC-E(Z)複合体全体の機能欠損により生じることを示した。ESC-E(Z)複合体機能欠損胚においてhedgehogシグナリングの標的遺伝子であるspaltの腹側中枢神経系における減少と、Pax2の眼茎における消失を認めた。通常shh過剰発現胚においてはspaltなどのhedgehog標的遺伝子は発現領域の拡張を示すが、shh過剰発現とESC-E(Z)複合体の機能欠損を同時に起こした胚においては発現領域の拡張は見られなかった。この結果は、ESC-E(Z)複合体がhedgehogシグナリングの受け手の細胞内において重要な役割を果たしているという仮説を支持する。この仮説をさらに検証するため、in vitro実験として、マウス培養細胞NIH-3T3をShhペプチド添加条件で培養しヒストンH3のメチル化の上昇を確認した。この結果は、ESC-E(Z) 複合体のhedgehogシグナリングへの関与はメダカのみならず、広く生物界において見られることを示唆する。さらに、in vivo実験として、メダカ胚を用いてhedgehogシグナリングの阻害によりヒストンH3のメチル化の減少を確認した(Shindo et al., 2004; Shindo et al., 2005)。