表題番号:2004A-089 日付:2005/03/24
研究課題ポリコームタンパク質M33の核-細胞質シャトリングとエピジェネティック制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 東中川 徹
研究成果概要
すでに我々は、ポリコーム遺伝子群の機能研究の第一歩として、マウスポリコーム遺伝子M33のコードするタンパク質M33が細胞核内でタンパク質複合体を形成していることを明らかにした。しかし、マウス肝臓においてはM33タンパク質は他のポリコームタンパク質と異なり核局在ではなく細胞質に局在していた。さらに詳細に検討した結果、肝臓細胞の細胞質に局在するM33は核のM33が脱リン酸化を受けたものであること、肝再生状態を誘導すると、DNA複製と細胞分裂時に呼応してM33タンパク質のリン酸化と核への移行が見られた。DNA複製の停止とともにふたたびM33は細胞質に現れた。つまり、マウス肝臓においては、M33タンパク質はリン酸化を伴った核―細胞質間ダイナミックシャトリングを行っていることが示された。このような知見は他のポリコームタンパク質では全く知られていない(BBRC, 2002)。この核―細胞質間ダイナミックシャトリングの機構を明らかにすることを目的として、M33タンパク質に存在する3つの仮想的核移行シグナル(NLS1,2,3)を、単独、またはコンビンエーションにより欠失したクローンを作製し、レポーターとしてGFPに結合させマウス培養細胞に導入しGFPシグナルの核-細胞質における分布を調べた。その結果、現在までのところNLS2がM33の核移行にかかわることが示された。一方、細胞質のM33タンパク質の存在状態を知るため免疫電子顕微鏡法による観察を開始した。M33タンパク質のマウス肝臓におけるダイナミック・シャトリングの発見は、M33タンパク質さらにはポリコームタンパク質の作用機構に新たな側面をもたらすものとして評価できる。他の研究グループからの関心も高い。