表題番号:2004A-088 日付:2005/02/21
研究課題浮世草子を中心とした17世紀日本文学のセクシュアリティに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 中嶋 隆
研究成果概要
本研究で主に対象にした浮世草子は、以下の三種である。1、上方版半紙本型好色本 2、江戸版半紙本型好色本 3、上方版西川祐信画横本型好色本。これらについて、次の観点から考察を加えた。(1)書誌的研究 造本分業システムと書肆の役割、出版の地域差による書誌的相違に留意しつつ、諸本を調査した。(2)絵画史的研究 版本の挿絵は、絵師名が明記されない場合が多いので、絵を厳密に比較して画風をまず確定し、構図や趣向を確認する必要がある。その上で、好色本の挿絵の絵画史上の位置を明確にした。(3)文学史的研究 読者の性的興味に迎合した作品として、西鶴以外の好色本は、文学史ではほとんど無視されてきた。しかし、この点を通時軸にすえ、リプレゼンテーションとセクシュアリティの相関と様式化の諸相について分析した。(4)文化史的研究 17世紀の日本文学に現出するセクシュアリティが都市文化の所産であるという観点から、廓や私娼等の都市風俗や都市構造の文学作品への反映、あるいは儒教的倫理観や古来からの「色好み」観の、近世都市空間のでの転調について考察した。
特に、国際日本文化研究センター所蔵の艶本と天理図書館所蔵の好色本の書誌調査を中心に、本年度は研究を行った。