表題番号:2004A-085 日付:2005/03/06
研究課題ポストゲノム時代のラン色細菌の光生物的水素生産性向上に向けた基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 櫻井 英博
研究成果概要
本研究の目的は、ラン色細菌の光合成系を利用して化石燃料代替エネルギーとして経済的に水素を光生物的に生産するするための生物学的基盤構築に貢献することである.前年度までの成果の上に研究を継続し、次の成果を得た.
1.ヒドロゲナーゼ構造遺伝子破壊変異株構築
本研究室における予備的研究によりNostoc sp. PCC 7422野生株は他の株に比べて、Hox(双方向性ヒドロゲナーゼ)活性が極めて低くかつニトロゲナーゼ活性が比較的高かった.本株のhox,hup遺伝子クラスターの塩基配列を決定し、hupL破壊変異株(ΔhupL)を作成した.PCC 7422変異株の水素生産性は、既に作成したPCC 7120 ΔhupL変異株のものとほぼ同等で,野生株に比べて4-7倍の生産性を示した.
(発表準備中)
2.ヒドロゲナーゼ成熟遺伝子hypF破壊変異株構築
ヒドロゲナーゼの活性発現にはhyp遺伝子群の共同を必要とし,このうちHypFは金属クラスター形成に必須であるといわれる。PCC 7120 は2種類のヒドロゲナーゼを持つが,その活性を完全になくすにはそれぞれの構造遺伝子を破壊しなければならない。それに対し,HypF破壊の場合は1回の遺伝子操作で両方の活性を抑制できる可能性が考えられるので、ΔhypFを遺伝子破壊法により作成した。ΔhypF株は期待通りに野生株に比べて高い水素生産性を示した.なお、窒素飢餓条件に移してから窒素固定(水素生産)を開始するまでの時間に関し、ΔhupL、ΔhypF、野生株の間にわずかな差が認められるので、その原因について研究を継続している。
3.ヒドロゲナーゼ変異株による水素の蓄積
初期気相をさまざまに変え,密閉容器中での水素の蓄積について検討した.Ar + 5%CO2のとき、水素を比較的高濃度に蓄積し,濃度(v/v)30%以上にまで達した.これは、実用化に向けての大きな成果だと考えられ,更に高濃度蓄積に向けて諸条件の検討を行っている.