表題番号:2004A-054 日付:2010/11/16
研究課題縄文社会の複合化・階層化過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 高橋龍三郎
研究成果概要
  縄文社会の性格と複雑化・階層化の様相について研究するために、同程度の文化発展段階にあると目される北米北西海岸部のネイティブ・インディアンの民族誌を調査した。カナダのクイーン・シャーロット島には、かつてハイダ族が居住した集落跡が多数残り、200年ほど前の廃屋やトーテムポールが朽ち果てた形で残されている。8月2日~10日の日程で、同島に残されたニンスティンツ遺跡やスケダン遺跡、タヌー遺跡等を巡検して、これらの遺跡景観、集落構成と家屋規模、家屋構造などについて調査し、自然資源の獲得に立脚しながらも、親族組織を基盤にして首長を戴く階層化社会を達成した文化・社会の様相について研究した。その成果は同じく狩猟採集活動に基づく獲得経済段階にとどまった縄文社会の複雑化、階層化を考える上で大変重要な情報を提供してくれた。
 それらの成果を受けて、10月2日・3日に縄文社会研究会(安斎正人代表)と先史考古学研究所との共催で昨年度に引き続き「縄文社会を巡るシンポジウムⅡ―景観と遺跡―」を早稲田大学で開催した。また比較考古学研究所(菊池徹夫所長)、シルクロード研究所(岡内三真所長)と先史考古学研究所との合同シンポジウム「考古学からみた社会の複雑化」を開催して(12月4日)、社会の複雑化過程を考古学ではどのように扱うかについて広い視野から検討し、私はパプア・ニューギニアでの調査研究の成果をもとに、未開社会の生業と社会構造について明らかにした。
 また昨年度、考古学実習の一環として千葉県印旛村の戸ノ内貝塚を測量調査したが、目的は縄文社会の複雑化・階層化過程を実際の遺跡の上から探ることであった。本年度は図面、採集遺物の整理作業を通じて測量成果をまとめた。、測量調査の成果を受けて、2005年度には本格的な発掘調査を計画しており、地主や関係者との交渉など、調整作業に入った。