表題番号:2004A-047 日付:2005/03/17
研究課題中国における出土遺物と現存祭祀儀礼から見た仮面文化の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 稲畑 耕一郎
研究成果概要
 中国考古学界の03年から04年にかけての最大の関心事は、西周期の王陵かと目される陝西省岐山県周公廟における発掘である。それは、殷墟にも匹敵する遺跡といわれている。04年7月、現地を訪れ、遺跡の概容の理解と出土遺物の初歩的な調査を行い、発掘の責任者である北京大学の徐天進教授、雷副教授と意見の交換を行うことで、多くの最新情報と関連資料を得た。12月にも再訪し、発掘の進捗状況を見学。
 9月には、四川省成都に行き、金沙遺跡の発掘の現状を見学し、その発掘主体である成都市文物考古研究所の王毅所長らと会談、また四川省考古研究所を訪問し、高大倫所長らから三星堆および四川省全体の近年の考古発掘の状況について説明を受け、今後の研究協力について話し合いをした。
 国内では、「よみがえる四川文明展」「愛・地球博」などの展覧にかかわることにより、具体的な文物を通して、近年の中国における考古学成果の最新情報の収集に努めた。たとえば、愛知万博のメイン会場であるグローバル・ハウスにおいて展示する、7世紀前半、唐王朝全盛期の皇族の墓から出土した壁画「ポロ図」(縦130cm×横305cm)は、その大きさと保存のよさばかりでなく、何よりも絵そのもののすばらしさで、見る人のこころを打つ作品となっており、これを世界に先駆けて展示できたことは、学問的にも、社会的な仕事としても大きな成果となったと考える。これによって、唐代絵画の芸術水準がどれほどのものであったかがよく理解できるからである。また、古代壁画の剥ぎ取り、修復、保存などの技術問題についても、一石を投じるものと考える。
 仮面については、なお継続的に調査を続けているが、関連の出土資料はいよいよ多くなり、当初考えた見取り図がほぼその通りであることを確認しつつある。また、これまでの成果をまとめた拙著『神と人との交響楽―中国 仮面の世界』(農文協、2003年10月刊)に基づいて、放送大学から特別講義「中国 仮面の世界」の依頼を受け、これを45分番組として収録した(05年6月放映予定)。