表題番号:2004A-038 日付:2006/04/27
研究課題ジョルジュ・バタイユの思想、行動、およびその時代
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 吉田 裕
研究成果概要
バタイユの政治的実践的活動を思想を明らかにする仕事を『バタイユ・マテリアリ
スト』の表題でまとめた後、2004年から、宗教的思想と活動をたどる作業に本格的に
取りかかった。彼の宗教観の基盤は、社会学的な知見の渉猟から始まったが、それを
「エクスターズの探求者」でまとめた上で、彼のこの方面のもっとも重要な著作であ
る『内的体験』を解読する作業に入った。この作業は自分としては、宗教的探求者と
してのバタイユのまとめのつもりである。その結果(キリスト教、ニーチェ、戦争、
言語との関係を主題とした)を「内的体験をめぐって」の表題で、成城大学フランス
文化研究会の機関誌「AZUR」に連載し、2005年に「Ⅲ」で完結させた。
 それに伴い、バタイユの最初期の小説である「眼球譚」について、一つの定説とな
っているロラン・バルトの読み方を批判し、文学テキストとはどんなものであるかに
ついての自分の考えを、「『眼球譚』論」として示した。
 以上の2点に、これまで書いたいくつかのバタイユ論を加え、一冊にまとめる仕事
を継続中である。
また、1999年にフランスで、バタイユの宗教的実験の場であった結社「アセファル」
に関わる重要な資料集が出版され、2003年来、訳者代表として4人の若い研究者とそ
の後半部分を翻訳する仕事に従事してきたが、2006年、『聖なる陰謀』の表題で刊行
することが出来た。そこに解説論文「アセファルをめぐって」を掲載した。
 さらに比較文学的関心もあり、バタイユの日本への受容について調査を行い、早稲
田大学比較文学研究室の「月例研究会」で「バタイユの受容・吉本隆明の場合」の表
題で口頭発表を行い、後にそれを論文としてまとめ「比較文学年誌」に発表した。