表題番号:2004A-025 日付:2009/11/14
研究課題日本撰述経典(偽経)の伝承と近世に於けるその受容-『光明眞言儀軌』を中心として-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 ニールス・グュルベルク
研究成果概要
特定課題報告

日本撰述経典(偽経)の伝承と近世に於けるその受容
―『光明眞言儀軌』を中心として―
課題番号:2004A-025

今回採択された研究計画を実際に始めていく過程で、近世の光明真言信仰に関する重要な書籍を、古本市場から購入することができた。その中、特に注目すべきは、宝永七(1710)年に刊行された泰音著『光明眞言照闇鈔纂靈記』(三巻六冊)である。
この『光明眞言照闇鈔纂靈記』の研究に直ちにとりかかり、その成果の一端を早速国際学会で発表した。昨年平成16年九月二十日から二十六日までドイツのハレで開催されたドイツ東洋学会第28回大会において口頭で発表した「経典解釈書と説話集との間―泰音の寶永7年(1710)刊『光明眞言照闇鈔纂靈記』について―」が、それである。
泰音の『光明眞言照闇鈔纂靈記』は、亮汰の『照闇鈔』の優れた末釈であると同時に、それまで纏まった形ではなかった光明真言利得説話集でもある。発表では、このことを幾つかの具体例で示し、解説を加えつつ、紹介した。今後も、この『光明眞言照闇鈔纂靈記』に載せられている説話について翻刻や研究を行なう予定である。
他に今まで充分に翻刻されていなかった近世の光明真言信仰資料の研究と翻刻作業を進めており、目下は資料の翻刻をシリーズでスタートさせたところである。その第一号は正徳三年(1713)に出版された鏡寛著『光明眞言得道按心鈔』である。2005年2月に早稲田大学法学会の『人文論集』43号で公開した。このシリーズの特徴と目的は、できるかぎり正確な翻刻を行ない、近世の仏教資料ではこれまで殆ど実施されていない注釈を施し、入手しがたい資料を研究者に広く提供すことである。