表題番号:2004A-014 日付:2005/12/08
研究課題地域金融機関のrelationship banking の強化と信用保証制度
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 森 映雄
研究成果概要
 課題の目的はバブル崩壊以降の時期(平成2~8年)における信用金庫の不良債権発生要因の検証である。われわれが立てた仮説は「信金が金融自由化以降の情勢変化に対応しようとする融資姿勢が結果的に、過剰貸出の状態に陥入らせた。そしてバブル後の地域経済情勢の悪化が、信用金庫の債権を一層劣化・不良化させた。そこには信金の情報生産機能に問題があったし、過剰な融資姿勢にブレーキを掛けたり、債権が劣化する前に手を打つ債権を管理する情報処理システムにも問題があったのではないか」というものである。この仮説を検証するために、われわれは信用金庫財務データ等を基にしたマイクロデータセットを作成した。そして、1.過剰貸出過大化、2.地域景況、3.信用金庫の情報処理体制に関連する
諸要因に、4.サンプルの特殊性をコントロールする要因を加えたものを説明変数、信用金庫の不良債権比率を非説明変数とする回帰分析を行った(平成8年度末時点のクロスセクシヨン分析)。①過剰貸出に関連する要因(債務保証比率、貸出姿勢、都銀・地銀との競合関係)。②地域景況に関連する要因する要因(地域変化率、民営事業所数)③信金の情報処理体制に関連する要因(店舗数、職員数、店舗網集中度)④特殊サンプルのコントロールに関連する要因(東京・大阪のような特殊地域、合併経験)という4つの要因を考え、これらの一次・二次項および交差項と不良債権比率による回帰分析を行った。具体的には上述の平成2~8年を一つの期ととらえ、各信用金庫をサンプルとするマイクロデータによるクロスセクション分析を行った。その分析結果を看てわれわれは、1)過剰貸出と地域景況の悪化は
不良債権比率に有意な正の影響を持つ。それも、この2つが複合的に作用したことが状況をさらに悪化させた可能性が高い、2)信用金庫の情報処理能力如何では、不良債権比率の上昇を押さえられた可能性がある。しかし、それは十分に機能していなかった、と結論