表題番号:2004A-010 日付:2005/03/23
研究課題公共経営改革の国際比較:ニュージーランド・ドイツ・オランダ・日本の公立病院改革
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 藤井 浩司
研究成果概要
公共経営改革の国際比較:ニュージーランド・ドイツ・オランダ・日本の公立病院改革
本研究は、1980年代以後、各国で進められている一連の公共経営改革の内、とくに医療政策分野に焦点を絞り、ニュージーランド、ドイツ、オランダ、日本の動向を把握して比較分析をすることにより、公共部門の新たな機能と構造を明らかにすることを目的としている。
ニュージーランドでは、従来は全国に設置された病院委員会が国立病院の管理運営に当たってきたが、83年には地域保健委員会へ再編され、さらに93年には同委員会がサービス購入機関と供給機関に分離されるなど、契約方式の導入、供給機関の民営化が進められた。
こうしたNPM(New Public Management)的な改革手法はニュージーランドをはじめとするアングロサクソン諸国において用いられてきたが、近年では、元来市場主義には懐疑的であったライン系欧州諸国にも政策移転され、公立病院の民営化や医療分野の規制緩和が実施されている。 
まずドイツの場合は各州によって異なるが、従来は病床ベースで半数以上を占めていた公立病院が減少傾向にあり、その民営化が進んでいる。例えばハンブルク州では、高度生命科学技術を用いた医療機関への発展を目的として、部分的に持分を民間企業に売却するという形で州立病院を民営化した。他方、オランダにおいては、私立病院が大多数を占めており公立(自治体立)病院が存在しないため、民営化という事例はないが、医療計画などを通じた行政介入が批判されるようになり、計画作成過程の簡略化、一般医の参入規制の緩和が行われている。
日本でも同様に、90年代後半以後、公立病院のNPM改革が漸次進められている。病院内の駐車場などの関連業務に関してPFI(Private Finance Initiative)を導入するという動きが全国的に見られるほか、一部の地方自治体では病院本体の民営化が検討段階にある。今後の改革を展望すると、行政の役割があらためて問われることとなろうが、ドイツでの事例が示しているように、公共性の確保の視点から行政による一定程度の関与を残しておくことが重要であろう。今回の研究で得られた知見をもとに、今後の医療分野をはじめとする公共経営改革の帰趨を継続的に観察、研究していきたいと考えている。