表題番号:2003C-012 日付:2006/10/25
研究課題ヨーロッパ中世哲学における異文化理解の伝統の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 八巻 和彦
(連携研究者) 商学学術院 教授 矢内義顕
(連携研究者) Universitaet Mannheim 教授 Ludwig Hagemann
(連携研究者) Universitaet Trier 教授 Walter A. Euler
研究成果概要
 本研究課題では、スコラ哲学初期のアンセルムスから中世末期のクザーヌスまでの思想に見出される宗教寛容論の展開と深化にテーマをしぼって研究を進めた。
 その締めくくりとして、本年3月に「宗教寛容論の諸相」と題する国際ワークショップを開催した。これには、病気で参加できなかったハーゲマンを除く、八巻、矢内、オイラーの本研究課題の研究参加者全員が集まり、さらに、リッジョン、キャサレラ、アンドレら諸外国の友人も招聘し、さらに、折から開催された「国際宗教学宗教史会議世界大会」に参加した友人も加えて、各自が研究成果を発表した。同時に、上記の世界大会内に八巻和彦と矢内義顕とがそれぞれパネルを設けて、合計7人が研究成果を発表した。さらに早稲田大学で独自にワークショップを開き、都合三日にわたって互いに議論を深めた。
 本研究の成果の主要点は以下の通りである。(1)キリスト教の独善性と絶対性の主張を配して他の宗教を理解しようとする場合の理論的な枠組みは、いかにして具体的信仰を抽象的な理性の場に還元して、その理性が全人類に普遍的に存在することを根拠として、相互理解を成立させようと努めるという点に要がある。(2)その場合には、アンセルムスのように、自己のキリスト教信仰をそのままキリスト教一般の正当性とする前提に立ちつつ、しかし理性のみによって相手と対話して相互理解に達しようとする立場があると共に、(3)クザーヌスのように、自己の信仰の事実性は前提としつつも、現実のキリスト教の普遍的正当性に疑念をもちつつ、人類に普遍的な宗教性 connata religioの遍在を指摘することで、相互理解を成立させようとする立場がある。
 なお、本研究課題との関連で、八巻和彦が2004年度より科研費を獲得したので、このテーマは、他大学の研究者の参加も得て、さらに二年間、継続され深化される。また、近く、英文にて上記ワークショップの成果を公刊する予定である。