表題番号:2003C-001 日付:2006/11/24
研究課題東アジアにおける企業活動のグローバリゼーションとその社会的効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 白木 三秀
研究成果概要
特定課題研究(テーマ:「東アジアにおける企業活動のグローバリゼーションとその社会的効果」)として2003年度・2004年度の2年間にわたって行われた研究会での成果に基づき、著書、『チャイナ・シフトの人的資源管理』を白桃書房から出版した。これは、研究活動の内、現下の中国への投資シフトと人的資源管理の動向に関連して改めてまとめたものである。内容から明らかなように、若い研究者の強い問題意識に支えられた著作である。
 第Ⅰ部の1章~4章は、直接投資における日本、韓国、台湾の東アジア諸国からの中国シフトの実態を詳細に検討している。
第1章は、日本の対中国直接投資と企業活動について論じている。第2章は、韓国から中国への直接投資と企業活動の諸特徴について論じている。第3章は、台湾から中国への直接投資と企業活動の諸特徴について論じている。第4章では、上記の検討を踏まえて、これら東アジア系の外資系企業の中国における展開と諸特徴を相互に比較している。
 第Ⅱ部では、中国における労働市場の変化と人的資源管理の特徴や動向をマクロ・ミクロの両面、ならびに、いくつかの異なる視点から検討している。第5章の労働市場のマクロ的変化と諸特徴では、労働市場の形成過程と就業構造の産業別変化、就業構造の所有形態別変化、都市部労働市場における労働力供給、さらに、最低賃金を通じて政府が労働市場の需給に与える影響などを検討した。第6章は、社会主義市場経済に移行した1980年代以降、中国の豊富な労働力が、市場でどのように配分されているかを分析し、また、失業保険制度を中心に、労働市場の変化に対して社会保険制度がどのように対応したかを検討した。第7章は、代表的な中国企業3社――ハイアール(海爾)、レノボ(聯想)、華為(ファウェイ)のケーススタディを通じて、期限つき雇用契約、成果主義に基づく人事評価、信賞必罰、末位淘汰、ストックオプション、戦略型人材育成などの中国企業が実行している中国型人的資源管理(HRM)の主要な制度と慣行を考察し、中国型HRMモデルを浮き彫りにしようとした。第8章は、中国における日系企業の人的資源管理について、アンケート調査と企業インタビューからその諸特徴を明らかにすることを試みている。
 第Ⅲ部では、ソフトウエア産業における人的資源管理について、その政策と企業の事例研究を通じて分析している。第9章は、中国におけるソフトウエア産業の全体状況を分析しながら、政府の主な政策規定とソフトウエア産業の人材育成ならびに人的資源管理の実態について検討した。第10章は、北京市に所在する日系ソフトウエア企業2社、中国ローカル・ソフトウエア企業2社の事例を検討した。終章は、本書の議論をより一般的な枠組みの中で位置づけるべく日系多国籍企業のアジア展開と人的資源管理上の諸課題について論じている。
 各章の執筆担当者は以下の通りである。
白木三秀 早稲田大学政治経済学術院教授(序章、第4章、終章)
熊迫真一 早稲田大学大学院博士後期課程(第1章)
郭 智雄 九州産業大学商学部専任講師(第2章)
齊藤陽子 早稲田大学大学院博士後期課程(第3章)
尹 春華 早稲田大学大学院博士後期課程(第5章)
于 洋  城西大学経済学部専任講師(第6章)
徐 向東 キャストコンサルティング代表取締役・専修大学講師(第7章)
太田仁志 アジア経済研究所研究員(第8章)
許 海珠 国士舘大学政経学部教授(第9章)
梅澤 隆 国士舘大学政経学部教授(第10章)