表題番号:2003B-038 日付:2005/03/04
研究課題固体高分子型燃料電池の内部挙動解明に関する基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 草鹿  仁
研究成果概要
固体高分子形燃料電池の内部物質輸送現象を解明するため,反応面を絶縁体により分割した分割電極セルを用いた電流密度および抵抗分布計測を行い,反応ガスの相対湿度,ガス流れ方向(コフロー,カウンターフロー),ガス拡散層仕様(カーボンクロス,カーボンペーパー)がセル性能へ与える影響を調査した.また,物質輸送と電気化学反応を連成させた単相2次元数値モデルを構築し,実験結果との比較検討を行った.低加湿運転時には,カウンターフローによるセル内の水分循環効果を利用することで,同加湿条件のコフローに比べ,反応面全域の抵抗を低く抑えることでき,セル電圧を確保できることが示された.また,拡散性が低いガス拡散層を用いた場合には,フラッディング特性が変化することが明らかになった.これらの検討より,電解質膜内の水分分布を予測することが可能になり,各種運転条件における輸送現象を解析し,設計指針を得ることができた.また,従来の研究において,数値モデルに用いる供試電解質膜の物質輸送特性(含水率特性,水の拡散係数)は,いくつかの文献値を参照するに留まっていたが,これらの値はセル内の水分移動特性に対し,大きな寄与度をもつことが知られている.そこで,鏡面冷却式露点計を用いて供試膜の物質輸送物性を計測し,その計測結果を数値モデルに組み込み,不確定なパラメータを減らすことでモデルの精度を向上させた.さらに,露点計を用いた発電中の極間の水分移動量計測を行い,実験と計算の結果において良好な一致が得られ,数値モデルの妥当性を確認するとともに,セル設計ツールとしての有用性を検証することができた.