表題番号:2003B-034 日付:2008/03/12
研究課題単一イオン注入による半導体ナノデバイスの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 堀越 佳治
(連携研究者) 理工学術院 教授 大泊 巌
(連携研究者) 先端科学・健康医療融合研究機構 客員講師(専任扱い) 品田 賢宏
(連携研究者) 理工学術院 助手 小野満 恒二
研究成果概要
本共同研究の目的は大泊研究室で開発された濃度、位置ともに極めて高い精度で制御できる集束イオン注入技術を堀越研究室で成長したⅢ-Ⅴ族化合物半導体に応用し、イオン注入に伴う新しい効果を発見することである。イオン注入による特異な現象として,集束イオン注入によるⅢ-Ⅴ族化合物半導体の局所的絶縁化や、異種原子の規則的クラスター形成などがよく知られている。我々は、GaAs基板にInを注入し熱処理したところ、注入した領域を中心とする微小な結晶が再成長することを発見した。この現象を利用すると集束イオン注入によって位置を完全に制御したドットを自由に形成することが可能であり、半導体量子ドット形成技術に発展できるものと期待できる。
集束イオン注入装置を用いて,GaAs基板にInイオンを注入した。GaAs(111)B及び(001)面上に、Inイオンのビーム径100nm、加速電圧30kVを一定とし、dose量を変化させて、dot状に注入を行った。熱処理時にGaAs基板表面のAsが解離するのを防ぐためInAs基板を密着させ、600℃と700℃において1分間の熱処理を行った。このときの表面構造をSEMによって調べた。
Inイオン注入直後のGaAs表面にはほとんど変化は見られなかったが、その後の熱処理によって、注入した領域を中心とするピラミッド状の微結晶が出現した。出現した微結晶は基板の結晶方位を引き継ぐfacetが形成されており、これらの微結晶の結晶性は非常に高いと言える。微結晶形成のメカニズムとして,熱処理時にイオン注入された領域の周囲のGaAs分子が,イオン注入された領域へと移動し微結晶を形成するためである。熱処理温度を上昇させると、移動するGaAs分子の数が多くなり、微結晶のサイズが大きくなることからもわかる。この微結晶形成の原因として、GaAs結晶中にInが注入されたことによる局所的な歪みであると考えている。
微結晶のサイズが熱処理条件に依存することから、条件の最適化により量子ドット形成も可能であると期待できる。今後,微結晶形成のメカニズムのさらなる解明と,サイズの制御を目標に研究をすすめる予定である。