表題番号:2003B-031 日付:2005/10/25
研究課題可積分系理論に基づく区分線形写像力学系の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 高橋 大輔
研究成果概要
 可積分理論において超離散化手法と呼ばれる離散化手法が発見され,最近の研究のホットなテーマとなっている.超離散化手法で得られる方程式は,max 演算と + および - 演算で構成される max-plus 方程式と呼ばれるクラスに属し,線形方程式が変数の値に応じて区分的に結合している形をとる.したがって区分線形方程式の解構造を研究することによって,超離散化手法の理論の基礎固めが可能となる.

 本研究の具体的な研究テーマと得られた成果は以下の通りである.

1.『非線形可積分および線形化可能区分線形方程式の解構造の研究』
 このテーマでは,Quispel-Robert-Thompson 系と呼ばれる一群の可積分な差分方程式に対して超離散化を行い,得られた区分線形方程式の解構造を研究した.解は相平面内で一定の閉多角形上に存在し,同一の閉多角形上では常に一定の周期を持つことを示した.さらに,従属変数変換によって線形化可能な区分線形方程式についても調査し,超離散化によって対応する線形化可能な差分方程式と,その線形化メカニズム自体が直接的に対応することを示した.

2.『アトラクタを持つ2階の区分線形方程式の探索』
 このテーマでは,2階区分線形方程式のある特定のクラスに対して,数値数式処理によって解構造を調べた.さらに超離散化によって対応する差分方程式の解構造についても調査し,それら方程式のうちのいくつかが可積分系と同様に明示的な解構造を有していることを示した.さらに,可積分差分方程式をその保存量を用いて非可積分方程式に拡張し,それらが明示的なアトラクタやリャプノフ関
数を持つことを示した.

3.『近可積分系によるパターン形成メカニズム』
 2のテーマで得られたアトラクタタイプの区分線形方程式をさらに高次元化し,その方程式の解が,反応拡散系にしばしば見られるようなターゲットパターンやスパイラルパターンを与えることを示した.出発点となる方程式は可積分系であり,この成果によって近可積分系とパターン形成系の間に直接的に近い関係があることが判明した.