表題番号:2003B-010 日付:2006/04/17
研究課題道の多元的空間構成に関する研究-陸・海・空を切り口として-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 長田 攻一
(連携研究者) 文学学術院 教授 坂田 正顕
(連携研究者) 文学学術院 教授 雲英 末雄
(連携研究者) 文学学術院 教授 千葉 文夫
研究成果概要
 本研究は、四国遍路道に関するこれまでの研究成果を踏まえて、第二次大戦後の急激な社会・経済的変動過程と車社会化の進行のなかで、四国の道路整備計画とともに遍路道が一貫して再生産されていくメカニズムを、高齢化社会、リスク社会、情報化社会といったマクロな社会過程の特質と関連づけることにより、遍路道を象徴的事例として現代社会の道空間の多元的再編過程を跡づけることを試みた。その場合、四国へのアクセスを含めて、とくに、陸、海、空の道といった人の身体移動を支える物理的空間の経験の特質の違いとその再編過程に注目し、それらと四国遍路道に対する信仰、観光、ウォーキング、歴史、文化といった人々の多様な意味付与との交錯が生み出す多元的空間構成の持つ現代的意味を明らかにすることを課題とした。
 平成15年度においては、陸、海、空を含む物理的空間と社会・文化的意味空間の関係を捉える上で適切な地域選定を目的として、国、県、市町村レベルの道路行政政策と地域住民および道路利用者の道路空間構成へのかかわりを明らかにするための資料収集とインタビューを行った結果、さぬき市、土佐清水市、鴨島町、小松島町、愛媛県上浮穴郡等が候補に上がった。 
平成16年度には、各選定地域における第2次大戦後の道空間構成およびその再編の過程を、陸、海、空の3つの空間次元に注目しながら、移動の効率化、観光化、自然遊歩道整備、伝統文化志向、世界遺産化などの社会文化的意味の交錯として捉えることにより、各地域内の他の道路との関係のなかで、便宜上とくに遍路道の多元的空間構成の特質を浮き彫りにすることを試みた。その結果、四国へのアクセス手段の変容(とくに空路と高速道路網)による遍路道の空間構成の画一化傾向と、四国内自動車道路網の整備に伴うアクセスの容易さと困難さの両極化による遍路道の社会文化的意味の対抗的ローカリゼーションが現れていることが確認された。
 本研究は、平成15年度、16年度の科学研究費と同一タイトルでの申請を行ったものであり、科学研究費の交付を受けつつ、その不足分を補填するための特定課題研究費の申請を行い、合計59万円の研究費補助を受けたものである。その研究成果に関しては、2006年3月に別途書籍の出版(仮タイトル:道空間のポリフォニー)を準備中である。