表題番号:2003A-972 日付:2004/03/31
研究課題朝鮮戦争時期の共和国文学と文学者
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 語学教育研究所 教授 布袋 敏博
研究成果概要
研究課題の資料のため、以下の2回にわたり調査を行なった。

○2003年9月2日~7日:ロシア・モスクワのヒムキ図書館
○2004年3月1日~10日:米国・ケンブリッジのハーバード大学燕京図書館(うち、1~4日はシカゴ大での講演、講義)

 前者は費用の一部を研究課題によっている。後者は私費によるものである。
 モスクワでは、時間の制約から、ヒムキ図書館の新聞資料しか調査できなかったが、初期北部朝鮮(以下、解放直後の北部朝鮮地域と建国後の朝鮮民主主義人民共和国の両者を含めて「北部朝鮮」と呼ぶことにする)で発行されていた『朝鮮新聞』が、創刊号(1946年2月20日)から所蔵されていることを新たに確認することができた。ヒムキには第843号(1948年12月30日)までが所蔵されていた。そこには現在知られる限り最初に解放後の北部朝鮮で発表された小説が掲載されているなど、他の媒体では知ることのできない当時の北部朝鮮の文化界の状況が報じられている。これらは、北部朝鮮での文壇形成を知る上で欠かすことのできない貴重な資料であり、朝鮮戦争期の文学状況につながる重要な発見である。
 同図書館では他にも数多くの、同図書館にしか所蔵されていない北部朝鮮の資料を閲覧できたが、その中でもう一点、週刊『文化戦線』も貴重な新資料であった。これは1948年頃から刊行され始めたと推測されるが、ヒムキ所蔵は93号(1950年3月6日)~113号(1950年8月26日)[うち96、100、105、106、108号は欠]の16号分のみである。この週刊『文化戦線』の発掘により、朝鮮戦争前夜および戦争直後の北朝鮮での文壇状況、文化状況をより具体的に生々しく知ることができることとなった。
 燕京図書館では、北朝鮮の資料は一部を除き1950年代後半のものであった。しかし同図書館には植民地末期の演劇関係資料に貴重なものが所蔵されていた。これらは、のちに越北し初期北部朝鮮で活躍することになる演劇関係者の作品を多く含んでおり、やはり特定課題研究との関係で欠かすことのできない新資料である。これらについては、再度ハーバード大学を訪問し詳細に調査するつもりでいる。