表題番号:2003A-956 日付:2005/03/18
研究課題複数のネットのオーバラピングによる機能局在型脳モデルの構成に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 助教授 古月 敬之
研究成果概要
脳科学の知見によれば、脳では様々な状況の経験を積むことによって同じような状況に遭遇したときにそれまでの経験と照らし合わせて最善の行動を選べる。これは脳における「学習」という。また、脳では音楽、運動などの個々の知性が働く時、脳の異なる部位が活動する現象があり、これは脳における「機能局在」が実現されているという。1949年、心理学者Hebbがセルアセンブリ(cell assembly)という脳構成理論を提案した。脳神経回路では、異なる回路間でのニューロンの重複(neurons overlapping)し、機能的シナプス結合の変化による回路自体の動的な変化(connection dynamics)される。

脳の原理を工学的に展開する研究について、1980年代から90年代にかけて人工的ニューラルネットワークとその学習アルゴリズム、記憶方式、カオスとの関連等の研究が進められているが、殆どの研究は脳の「学習」機能だけに注目し、脳の「機能局在」を実現した研究は少ない。そこで本研究では、上記のHebbのセルアセンブリ理論を参考にした学習能力と機能局在性を両方有する自己組織化機能局在ニューラルネットワーク(FLNN)を提案している。提案した自己組織化FLNNは二つ部分、メイン部とコントロール部で構成される。メイン部は通常の3層フィードフォワードニューラルネットワークであるが、中間層の各ニューロンの発火強度はコントロール部からの信号によって制御される。コントロール部は自己組織化マップ(SOM)ネットワークであり、その出力はメイン部の中間層ニューロンと関連付けられている。SOMによるコントロール部は入出力空間の構造的特徴を抽出し、メイン部の中間層ニューロンの発火強度を制御する。これにより自己組織化FLNNは学習能力だけでなく機能局在化能力も実現されている。また、数値シミュレーションを通して提案法の有効性を確認している。