表題番号:2003A-948 日付:2006/03/24
研究課題ヒルベルト曲線を利用した多次元データ管理システム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 鎌田 清一郎
研究成果概要
 本研究では,画像表現形式のまま移動や拡大等の処理ができ,範囲検索が高速にできるような多次元データ管理手法として、ヒルベルト曲線を用いて線形4分割木構造表現を行う手法を検討した.これは,空間内においてデータの有無を1,0の2値データで表現し,データがある領域をアドレスと領域サイズの組を一つのデータとして表し,そのデータの組をヒルベルト曲線が辿る順に並べて、多次元データを表現する手法である.ヒルベルト曲線はデータ間の近傍保存性が良く,データのクラスタ抽出ができるという特徴を持つ。範囲検索を高速に行えるMD木による範囲検索では,検索する領域を分割し,それぞれの検索領域を木構造の根から順にノードを辿って検索する.これに対し本手法は,1次元データで管理していることから,検索する領域を1次元データの先頭から検索領域が見つかるまで探索し,検索できれば,分割された他の検索領域は1次元配列上で近傍に存在するはずであるため,その近傍を検索するだけでよい.また,本手法は領域をアドレスで管理していることから,検索はアドレスの比較により簡単に行うことができる.本研究では,ヒルベルト曲線を用いたデータ表現から,表現形式を変えずに,移動,拡大・縮小,回転,抜き取り,共有,交わり,投影,制約,結合,差といった10種の処理を行う手法について述べた.2次元データである2値画像を用いて,本手法の有効性を確認した.また、MD木によるデータ表現において範囲検索の検索速度を比較し、本手法はMD木に対して20~30%検索効率がよいことがわかった.さらに,本手法の応用として,実時間描画のためにデータベースから高速な検索が必要である仮想都市空間のデータ管理への本手法の適用可能性について検討した.今後は,高速に範囲検索が行え,データ表現のまま種々の演算処理ができることから,仮想都市空間のデータ管理への適用をさらに検討する予定である.