表題番号:2003A-940 日付:2005/07/03
研究課題エラー反応の脳内モニタリングと負の情動生起についての精神生理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学部 専任講師 正木 宏明
研究成果概要
行動をモニタする脳領野として,前頭内側部の前部帯状回の役割は重要である.近年,エラー行動生起時に脳波上に観察されるエラー関連陰性電位(error-related negativity: ERN)によって,前部帯状回の担う行動モニタリング機能を捉えられるようになった.ERNはエラー検出機能以外にも負の情動を反映した電位であるとの主張もあるが,実験的検討が十分に行われていない.そこで本研究では,ERNと負の情動との関連性を明らかにするため,刺激推測課題に報酬と罰を付加し,結果の知識呈示に伴うERNを検討した.実験課題は,2種類選択肢のうち被験者の選んだものが,緑色に変化した場合には選択肢内に表示された数値分の報酬がプラスされ,赤色に変化した場合には表示数値分だけマイナスとなるものであった.結果の知識の呈示時点で脳波を加算平均した結果,負の結果が呈示されると,潜時約250msに陰性方向にシフトする陰性電位(ERN)が認められた.試行の中には,どちらの選択肢でも報酬が得られる時があったが,この場合,数値の低い方の選択は選択エラーとして分類される.一方,どちらの選択肢でもマイナスとなる時があり,この場合には,数値の大きい方が選択エラーとなる.ERNは,こうした選択エラーには影響されず,罰付加によって惹起されることが確認できた.この結果は,ERNは負の情動を反映することを示した従来の知見に合致した.一方,前試行の結果に基づいて,当該試行のERNを検討したところ,前試行の結果が悪い場合の方が良い場合に比較して,ERNは小さかった.これは,従来の知見に反するものであり,ERNは結果呈示までの待ち時間中の動機づけレベルを反映することが示唆された.これらの結果は,現在発表準備中にある.また,ERNの機能的意義を詳細に探るため,ERNと被験者のパーソナリティ特性との関連も現在解析中である.