表題番号:2003A-939 日付:2011/08/11
研究課題血流制限下の筋力トレーニングが中枢神経系の活動量に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学部 専任講師 宝田 雄大
研究成果概要
目的
局所的な血流制限下で筋力トレーニングを行うと、その運動強度が通常、筋肥大を期待することができない低強度であるにもかかわらず、顕著な筋力と筋断面積の増加を引き起こす。運動強度が低い場合、局所的な血流制限は活動筋内の酸素不足と代謝産物の筋外排出の抑制を引き起こす。こうした筋内環境の変化は、運動中の筋活動レベルや成長ホルモン分泌量を増加させる。これらは交感神経活動に深く関係していると考えられるので、本研究の目的は血流制限下筋力トレーニングが中枢神経系の活動量に与える影響を調べることとする。
方法
被検者は、右利きの健常男子1名(身長173cm、体重76kg、年齢38歳)とした。測定装置は、機能的(f)MRI (1.5-T Siemens Vision scanner)と高磁場内で使用可能な(非磁性体金属製)握力及び筋電図記録装置から成る。血流制限下の掌握運動中(等尺性筋力発揮)の脳活動の時間的変化をfMRIにより記録し、中枢神経系の活動量が調べられた(TR= 4s; FOV= 192 mm X 192 mm; マトリックス= 64 mm X 64mm; スライス数= 10 ; スライス厚= 3mm)。脳機能画像はStatistical Parametric Mapping (SPM)99 を用いて解剖学的標準脳に照らし合わせ解析し、脳賦活領域を確認した。なお、脳画像賦活領域の検出には、T検定が用いられた。被検者は、視覚的フィードバックシステム(リアルフィードバック用波形表示プログラムソフト、パーソナルコンピューター、カラーLCDプロジェクター、及びMRI頭部コイル内に設置された可変式レンズから成る)により発揮筋力レベルを正確に知ることができた。
結果と議論
局所的な血流制限は、低強度な運動中の大脳皮質の賦活レベルを有意に高める可能性が示唆された。このことは、上記生理反応の発現機序解明の有力な知見となろう。また、局所的な筋運動が中枢系の活性を介して身体の恒常性に寄与することが示されれば、健康体力作りにおける運動の位置づけが確立される。一方本実験により、EMG測定などによるノイズ軽減対策の検討やブロックデザインなどの実験条件の精査が今後の課題として明確化された。