表題番号:2003A-936 日付:2004/04/02
研究課題ウォーミングアップが筋腱複合体に及ぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学部 助教授 川上 泰雄
研究成果概要
 本運動前の「ウォーミングアップ」について、ストレッチングの効果に関する以下の実験を行った。1)筋腱複合体の解剖学的特徴の確認。関係機関の協力を仰ぎ、ヒト屍体の下腿三頭筋の筋束配置および腱組織配置を解剖観察した。下腿三頭筋を構成する腓腹筋およびヒラメ筋は筋腹部で弱く結合しており、異なる腱組織を有していたが、アキレス腱部分で腱線維を共有した構造をとることが明らかになった。これらの知見から、ストレッチングによる下腿三頭筋伸長時にアキレス腱は1構造単位として伸長されること、筋腹部の伸長度は伸長の程度によって異なる可能性が示唆された。2)下腿三頭筋のストレッチングによる急性変化。健常な男女大学生を被験者として以下の実験を行った。被験者は座位(膝関節は完全伸展位)をとり、足部を筋力計のフットプレートに固定した。フットプレートは等速で底屈位を始点として足背屈方向に回転し、一定の受動トルクが生じたときに回転を停止、その時の足関節角度を計測した。被験者は筋をリラックスさせ、能動的なトルクが生じないように配慮した。足関節背屈角度が一定になった後にモーターを停止して、足関節を初期位置に戻し、再びモーターのスイッチを入れて同じことを繰り返す、というようにして計10回の測定を行った。超音波装置を用いて背屈動作時の筋腱移行部の動きを計測し、筋線維およびアキレス腱(腓腹筋の外部腱)の伸長をそれぞれ求めた。10回の試行中に徐々に足背屈角度が増加した。このとき、筋線維伸長は4回目までは有意に増加したが、それ以降は増加が頭打ちとなった。一方、アキレス腱伸長は後半に有意に増加した。この結果は、(ダイナミックな)ストレッチングはその回数や負荷を工夫することによって筋線維と腱組織双方の伸展性を高める効果を及ぼし得ることを示唆する。現在、持続的な伸長負荷(静的ストレッチング)が下腿三頭筋の筋腱複合体に及ぼす効果に関する実験を進めている。