表題番号:2003A-935 日付:2004/03/29
研究課題陸上競技ハードル種目の技術指導法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学部 助教授 礒 繁雄
研究成果概要
 スポーツの指導場面では、運動学的立場から動作を観察し問題を明らかにした後に、指導方法を構成することが一般的である。今回対象とした、陸上競技種目の110m障害走は、技術指導を導くために、運動学的立場の手法を用いて明らかにすることを試みた。まず、110m障害走の動作は、高速度ビデをカメラにより記録しkinematics的分析を用いて、障害走の特性を明らかにした。また、110m障害走が短距離種目のトレーニング内容に類似するため、先行研究をもとに短距離走の特性と比較している。
 障害物間(インターバル)の所要時間が、1秒台前半で走行することが一流選手として重要な要素である事がわかっている。この場合の走測度は、毎秒9m程度であり、短距離走(最大速度)の75%程度の速度しか獲得する事が出来ない。原因は、障害物の存在とインターバル距離の設定が速度向上を妨げるものとであろう。そこで、インターバル間の3歩の動作を分析してみると、歩幅と支持時間に違いが存在した。各歩幅の違いは、運動学的視点からリズムの違いとして表現する事が出来る。さらにリズムの違いは、利き足で力を発揮するような移動距離と時間経過が見られる。
 インターバル間の重心変位は、短距離走に比べ非常に上下動が大きいことわかった。特に、障害物を越えた後の歩数で、極端な低下現象をおこしている。重心低下特長には、膝関節を固定したまま、接地足より膝を前方に前倒ししながら上体を前方に投射している事が見られる。この点は、国際大会出場選手に顕著に現れているため、指導方法を構築する動作として捉える必要がある。
 3次元的動作解析より、身体が障害物に対して正対していない事が国際大会選手の一部にみられる。特に股関節の振り上げ足側の傾斜が共通するところである。この点は、さらに、検討する必要があるが、110m障害走の特性となる可能性が含まれていよう。