表題番号:2003A-924 日付:2013/05/04
研究課題高層階における弱者の火災避難安全に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 専任講師 佐野 友紀
研究成果概要
高層階における弱者の火災避難安全の確保を目的として、以下の調査、実験を行った。
■研究概要
①弱者の身体寸法・動作寸法・身体能力等のデータの収集
 弱者の安全な避難方法を計画するためには、その人の避難時に発揮できる能力を人間工学的な観点から把握する必要がある。そこで、既存の書籍・資料・webサイト上のデータベースを中心に、高層階からの避難に関連する身体能力等のデータの収集・整理を行った。
②高層階からの階段降下避難実験
②-1 階段降下時の健常者の歩行速度の算定実験
 本研究では、災害弱者との比較のために、健常者の単独での階段降下について実験を行った。実際の事務所ビルの特別避難階段を実験場所とし、被験者20名について、20階層降下する場合の歩行速度を各階ごとに算定した。
②-2 避難用車いすを利用した階段降下実験
 2001.9.11のWTCテロ事件において、高層階に勤務していた車いす利用者が、避難用車いす(Evacuation Chair)という階段を降下できる車いすにのりかえ、介助されて避難し、助かった事例が報告されている。筆者らは、国内での導入例・研究例のほとんどない避難用車いすの操作性についての実験を行い、論文に発表した。ここでは継続研究として、避難用車いすの実用可能性について検討を行った。具体的には、被験者20名について、20階層降下する場合の歩行速度を各階ごとに算定した。また、実験の様子をビデオカメラによって撮影した。加えて、避難階段の踊り場部分での通過軌跡を、モーションキャプチャシステムを用いて算定し、事前訓練の必要性を明らかにした。
■ 研究成果
上記の研究を通して、国内では導入例が少ない「避難用車いす(Emergency Evacuation Chair)」の操作特性について人間工学的観点から基礎的なデータを得た。当該機器は、米国、英国等で導入されているが、人間工学的観点からデータを収集、分析された研究は、世界的に見ても少ないことから、本助成によって、有効な研究成果が得られたと考えている。
上記の調査結果及び実験結果は、国際会議2件および国内学会1件において、発表を行った。
国際会議:CIB-CTBUH Proceedings of the International Conference on Tall Buildings, Malaysia(1編)
国際会議:6th Asia-Oceania Symposium on Fire Science & Technology, Korea(1編)
国内会議:日本建築学会関東支部研究発表会(4編)