表題番号:2003A-918 日付:2006/03/08
研究課題幼児の健康福祉促進のための基礎的研究(I)―幼児の身体および生活習慣の問題とその対策―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 前橋 明
研究成果概要

本研究では,最近の幼児の身体状況および生活習慣について,測定・調査を実施し,今日の幼児が抱える問題や課題を探り,問題改善と生活の質の向上のための方策を検討することとした。生活習慣の把握のために,幼児2315名を対象として,アンケート調査を実施した。身体に関する測定では,5歳児168名を対象に,体温と両手握力,歩数を,秋季(10月)平日の午前9時,午前11時,午後4時に測定を行った。身体に問題を生じている対象としては,1日の体温変化が36℃台の枠に入らない児を中心に抽出し,その生活状況を分析することとした。
1日の体温変動が36℃台の枠に入らない子どもや,体温を調節する機能が低下している状態の子どもの出現に注目して,体温変動のパターンを整理してみると,主に4つのタイプにまとめられた。一つは,遅寝遅起で,日中,体温の高まっていないタイプ1,二つ目は,朝9時に36℃を下まわる低体温のタイプ2,三つ目は,37℃を越える高体温のタイプ3,そして,四つ目は体温が1℃以上にわたって変動するタイプ4であった。これらのタイプの子どもたちは,生活リズムが乱れていたり,食事や運動の習慣が悪いため,体温の変動リズムが後にズレていたり,自律神経による体温調節ができなくて,体温が高低の両極化の状態を生じたり,36℃台での生理的変動リズムがつくれていなかったりする子どもたちであった。
 今日の子どもたちは,遅い就寝と夜食摂取が習慣化される傾向にあることと,遅い就寝が短時間睡眠の原因になっていることが示唆され,幼少児期より,日常生活の中での精神的疲労症状の発現と体温リズムのズレや体温調節機能の低下,ならびに体力低下の問題発生が懸念された。