表題番号:2003A-914 日付:2004/03/23
研究課題湿地開発に際する環境アセスメントにおけるミティゲーションの手法の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 黒川 哲志
研究成果概要
開発や事業活動による自然破壊を最小限にするために、開発等に際して環境アセスメントが義務付けられている。特に、湿地の干拓や埋立を行うプロジェクトの許可に際して、それらの行為が環境に与える悪影響の緩和措置、いわゆるミティゲーションが実際的には主要な判断要素になることが多い。本研究では、米国でのミティゲーションを中心に調査した。
 プロジェクトに際して現地で行われるミティゲーションの努力は失敗に終わることが多いことが明らかになった。その原因として、プロジェクトの主体は環境保護や再生のプロでないこと、規模が小さいこと、許可を得る目的のミティゲーションであって本気で取り組まれるものでないことなどが突き止められた。解決策としては、プロジェクト単位での湿地の再生ではなく、地域単位で湿地の保全と再生が必要であることが認識された。
 このような認識は以前からも一部では示されていたが、今日では制度的にサポートされるようになって来た。米国の環境保護庁もガイドラインを作成している。それによると、あらかじめミティゲーションをおこなって湿地を再生しておき、その新たに創設された湿地をクレジットとして、個別のプロジェクトに売却するという仕組みである。事前に湿地をプロがつくるので、技術的にも成功する確率が高いと報告されている。小規模なプロジェクトに対しても、クレジット購入によるミティゲーションを要請できるメリットがある。そして、大規模に湿地を作るので、より大きな生態系的価値を保全できると言う利点がある。
 現在250程度の政府に認定されたミティゲーション・バンクがアメリカに存在する。スポンサーも公的セクターに加えて企業の比率も増えてきている。
 問題点として、クレジットの購入がミティゲーションとなるので、ビオトープ的な湿地が減少してしまうことがある。