表題番号:2003A-871 日付:2006/03/10
研究課題ケテンシリルN,O-アセタールの遠隔不斉誘導開発と生理活性物質への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 細川 誠二郎
研究成果概要
申請者が開発したケテンN,O-アセタールを用いた遠隔不斉誘導反応によって得られる生成物、5-ヒドロキシ-4-メチル-2,3-不飽和イミドの官能基変換を検討した。まず、2,3-不飽和イミドを直接2,3-不飽和アルデヒドに変換する方法を検討した。位のヒドロキシ基をTBSなどのかさ高いシリル基で保護した基質を用いた場合、5位にアルキル基、アルケニル基、アリール基のいずれが付いたものでも、-78℃にてDIBALを作用させることにより、高収率で目的とするアルデヒドが得られることを見出した。これにより、「遠隔不斉誘導反応→水酸基の保護→DIBAL還元」の3段階である程度の大きさを持つポリプロピオネート鎖を用意でき、さらにこれはアルデヒドであるために、直接次のアルドール反応に用いることができる。すなわち、この還元の実現により、非常に迅速にポリケチド化合物を合成する下地が作られた。
次に位のヒドロキシ基を除去して-デオキシ体に変換する方法を検討した。種々検討した結果、5-ヒドロキシ-4-メチル-2,3-不飽和イミドの水酸基をメシル化した後、リチウムトリエチルボロヒドリドを作用させることにより、位のデオキシ化が進行するとともに不斉補助基が還元的に除去されたアリルアルコール体が得られることを見出した。天然には還元段階の進んだポリプロピオネート化合物が多数存在するが、本方法はこれらの天然物の短段階合成を可能にするものである。この変換法を利用して、5-リポキシゲナーゼ阻害物質ラグナマイシンの初の不斉全合成を達成するとともに、その絶対立体配置を決定した。
この様に申請者は、シリルケテンN,O-アセタールを用いた遠隔不斉誘導反応の生成物を官能基変換することにより、ポリケチド鎖を短段階で構築する方法を確立した。さらにこの方法を用いて、生理活性を有するポリケチド化合物の全合成を達成した。