表題番号:2003A-868 日付:2008/04/15
研究課題DNA組換えタンパク質の機能的分子進化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 胡桃坂 仁志
研究成果概要
DNA組換えタンパク質は、ウイルス、バクテリアからヒトに至るまで普遍的に存在している。このように、進化的に高度に保存されたタンパク質は、生命体の生存にとって中心的な役割を果たす例が多く、DNA組換えタンパク質も、遺伝情報を担う染色体DNAに日常的に起こる二重鎖切断を修復するために重要な役割を果たしている。実際にがん細胞において、DNA組換えに関係した遺伝子上での変異やSNPが頻繁に見出され、このことは、DNA組換え修復の破綻が、発がんの主要な原因の1つであることを示唆している。DNA組換え反応のうち、特に相同組換えに関わるタンパク質が進化上高度に保存されている。相同組換えの要の反応は相同的対合であるが、この反応を直接触媒することが知られているバクテリアRecAタンパク質は、ヒトでは7種類のホモログが存在する。それらは、Rad51、Dmc1、そしてRad51バラログであるXrcc2、Xrcc3、Rad51B、Rad51C、Rad51Dである。この相同的対合タンパク質であるRecAの機能的分子進化を明らかにする目的で、これらヒトのRecAホモログとバクテリアのRecAの比較を生化学的解析により行った。その結果、ヒトのRecAホモログは7種類いずれも、単体もしくは複合体としてRecA様の相同的対合活性を有するが、その活性はバクテリアRecAとは比較にならないほど弱いことが明らかになった。また、白血病細胞で特異的に見られるRad51のリン酸化部位(Tyr315)が、Rad51のポリマー形成に重要な役割を果たすことを、部位特異的変異体作製法により作製した6種類の変異Rad51の生化学的および分光学的解析により明らかにした。Tyr315はバクテリアRecAには保存されておらず、Rad51が進化により獲得した新機能を担うと考えられる。また、ヒトRad51パラログであるXrcc3とRad51Cの複合体形成機構を明らかにするために、欠失変異体および点変異体を用いた生化学的解析により、それぞれの複合体形成に必要なドメイン領域を決定した。