表題番号:2003A-867 日付:2004/04/03
研究課題中性原子ボース-アインシュタイン凝縮系におけるゼロ・モード
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山中 由也
研究成果概要
 近年実現されている中性アルカリ原子のBose-Einstein凝縮(以下BECと略記)状態生成実験に対して、我々が最も注目するのは、量子多体系を記述する基礎理論の検証の場としての条件を有している事実である。これまで、このBECの実験との比較は、Gross-Pitaevskii方程式(平均場近似)を用いる方法、あるいはそれに加えて励起状態を量子論的に扱うHartree-Fock-Bogoliubov)の方法などで行われているのが実情である。本研究では、この系を最も基礎的理論である場の量子論、さらにそれに熱的自由度を加えた熱場の量子論の立場から定式化し、量子多体系を記述する場の量子論や熱場の量子論の理論形式の検証を行うことを最終目標とする。BEC系で重要なの、自発的対称性の破れに伴い出現する南部-Goldstone(NG)モードである。場の理論の立場から言えば、NGモードを正しく取り扱わなければ、場の量子論で基本的関係である正準交換関係を破ってしまう。また、BECでの新しい点として、トラップの存在のために並進対称性がないことで、NGモードは離散スペクトルとして存在する。
 BECで正準交換関係と矛盾しないようにNGモードを導入するには、2通りの方法が知られている。一つは(A)一般化されたBogoliubov形式で他の励起状態と同じように扱う方法と(B) Bogoliubov-de Gennes形式で量子座標として扱う方法である。(A)について場の量子論の定式化をして、密度分布関数に対する量子・熱揺らぎ効果をループ展開で計算した論文を(M. Okumura and Y. Yamanaka, Phys.Rev.A68 (2003) 013609)発表した。今回は(B)について同様に場の量子論として定式化した上でループ計算を実行し、その成果をまとめた(M. Okumura and Y. Yamanaka, Prog. Theor. Phys. 111 (2004) 199)。また、(A)と(B)の同等性についての証明を、論文としてまとめている。(M. Mine, M. Okumura and Y. Yamanaka, 投稿中)