表題番号:2003A-847 日付:2004/02/03
研究課題雁行脈の三次元的形態の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 新井 宏嘉
研究成果概要
 関東山地北縁部,上部白亜系跡倉層のタービダイトに発達する雁行脈の形態を三次元的に解析した.その結果,1つの鉱物脈(主脈)から雁行脈へと移り変わる形態が明らかになった.このような形態は断層や節理においてしばしば観察されるが,これまで考えられていたような主断裂から雁行配列する断裂群へとその回転角が徐々に増加するようなものではなく,主脈と雁行脈との漸移部で雁行脈の回転角が最大となることが明らかになった.このような産状はこれまで報告されていなかった.この形態は,母岩の岩相に強く依存し,砂岩泥岩互層の砂岩部では単一の脈,泥岩部では雁行脈が発達する.すなわち,脈の形態は岩相の違いによるコンピテンシーに依存していることになる.また,単一脈はほとんど方解石で形成されるのに対し,雁行脈は方解石のほか石英および緑泥石を多く含む.脈面積は単一脈ではほぼ一定であるのに対し,雁行脈では層理面に近づくにつれ徐々にその面積が減少する.個々の雁行脈の回転角から求めた剪断歪も,層理面に近づくにつれて減少する.雁行脈部での脈面積および剪断歪の減少,ブリッジ中の劈開の発達,脈構成鉱物中の石英および緑泥石の増加などから考えると,単一脈部と雁行脈部とでは歪の解消様式が異なっていたことが推察される.すなわち,単一脈部ではより脆性的な変形により,ほぼ脈に沿った変位のみで歪を解消したのに対し,雁行脈部ではより延性的な変形により,母岩中の石英などの圧力溶解による劈開形成および雁行脈の回転・成長によって歪を解消したものと考えられる.さらに,石英や方解石の脈鉱物に,結晶塑性変形による微細構造が観察されることから,これらの脈が脆性-延性遷移領域における剪断帯で形成されたものであると結論できる.