表題番号:2003A-806 日付:2004/04/22
研究課題多民族国家における民主化と国家解体―モンテネグロの分離独立要求の事例を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 助手 久保 慶一
研究成果概要
筆者は、提出した研究計画に従い、2003年6月27日から7月5日まで、北海道大学スラブ研究センターの資料室を訪問し、研究課題に関する資料収集を行った。今回の訪問では、モンテネグロ共和国のミロシェビッチ大統領批判と独自改革路線が顕著になった1997年10月のジュカノビッチ・モンテネグロ共和国大統領選出前後の経緯について、とくにベオグラード(セルビア)側からの報道を集中的に閲覧・収集した。今回の訪問で閲覧した新聞資料は、おもに1997年~1998年前半のポリティカ紙とボルバ紙である。今回の収集作業により、(1)現職大統領(ブラトビッチ)と同じ政党に属していたジュカノビッチが大統領選に対立候補として立候補するに至る過程、(2)1997年10月の大統領選の経緯(とくに選挙運動の様子)、(3)ジュカノビッチ候補の当選が明らかになった後のブラトビッチ候補側の動き(選挙結果を批判するデモ抗議の組織・動員、現政党からの離脱と新政党の結成)ならびにベオグラードの報道機関の動向(ジュカノビッチ新大統領に対する批判的な記事等)について多くの資料を収集することができた。モンテネグロ共和国の事例は旧ユーゴスラビアについて扱った研究書においても小さくしか扱われないことが多く、モンテネグロに関する新聞資料の内容についても二次文献からは伺えないことが多い。そうした中で、とくにジュカノビッチ候補当選後のブラトビッチ候補陣営ならびにベオグラード側の反応についての資料を得ることができたのは大きな収穫であったと考えている。以後は、収集した資料にもとづいて事例分析を進め、研究成果を刊行することを目指したい。