表題番号:2003A-801 日付:2004/07/02
研究課題高度成長期の自民党政治を再考する
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 河野 勝
研究成果概要
日本における優越政党として長く政権についてきた自由民主党は、1955年に結党されてから1970年代前半まで、衆議院選挙における公認候補者数をへらし、その結果得票率をも低下させた。従来、この現象は、日本において近代化、都市化、農村から都市への人口移動が進展する過程で、保守勢力の地盤が切り崩された結果起こったものであると考えられてきた。しかし、本研究においては、自民党の議席率が決して50%を下回らなかったことを重視して、単記非移譲投票・中選挙区制という特殊な選挙制度のもとでは候補者数の絞込みが、自民党にとっては議席の過半数を確保する合理的な戦略であったことをあきらかにした。具体的には、compositional data analysisとシミュレーションを行って、他の条件が一定であれば自民党は候補者数を減らすほど議席率を増やすことができたことをしめした。さらに、本研究では、都市化や産業別就業人口などが自民党の候補者の数を決定する上で影響がなかったことも併せてあきらかにした。後者の実証にあたっては、国勢調査にもとづいた各種のデータを、衆議院の選挙区ごとに集計しなおして、新たなデータセットを作成した。これまでの選挙研究においては、このような経済社会変数を選挙区レベルに落としたデータセットがなく、さまざまな実証研究を進める上で大きな障害になっていた。そこで、2004年12月までには、このデータは一般に公開し、日本の選挙・投票行動研究者たちの共有財産として活用される体勢を整える。