表題番号:2003A-620 日付:2005/03/16
研究課題語彙密度とリーダビリティの指標分析から見るエッセイライティングの新たな評価法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 高山 正弘
研究成果概要
本研究は中等教育段階の日本人英語学習者のパフォーマンス能力、特に英文による表現能力を伸ばすのに効果的な指導は何かという問に答えようとするものであり、主にコンピュータを使ったエッセイ・ライティング作品の評価面の研究から、英語表現力養成指導上最も有効かつ適切と思われる方法論を考察する。これまでの研究では、L2学習者対象の英文エッセイ・ライティングの評価方法についてはフィードバックの観点からは全体的評価法よりも分析的評価法の方が適しているということがわかっている。本研究では、日本人学習者の書いた実際のライティング作品をL2学習者へのライティング指導経験のあるネイティブ・スピーカー2人に、分析的評価法の基準(criteria)に従って評価してもらう。そして語彙面の分析とライティングの構成要素間の相関や因果関係についてどのような結果になるかを統計処理を通して見た。結論は以下のようである。ライティング分析の指標として、語彙の多様性と語彙密度、リーダビリティの指標として、エッセイの長さと語の長さを取り上げ、こうした「語彙の豊さ」やリーダビリティの指標のそれぞれを独立変数、エッセイ・ライティング作品の「質」を従属変数として統計分析を行い、相互の関係を考察したが、語彙の多様性に関しては、「誤りのない語彙の多様性」がライティングの質と一部有意な結果を示したものの、総体的には語彙の多様性も語彙密度もライティングの質との関係においては有意な相関は見られなかった。ただ経年的に見た場合、語彙の多様性や語彙密度の結果の向上は見られた。またリーダビリティについては、語の長さはライティング作品の質とは無相関であったが、エッセイの長さは質と有意な相関を示した。これは経年的観点から見た場合でも統計的に有意な結果がでており、エッセイ・ライティングの長さはライティング能力伸長の評価基準として有効な指標になりえることが改めて検証された。また、分析的評価法に基づいたライティングの項目別観点評価の分析結果によると、「英文パラグラフ構成・文法」の組み合わせが、最も高くライティングの「質」を予測説明できることがわかった。本研究の結果は語彙指導や文法指導と平行して英文パラグラフ構成の指導を強化することが日本人学習者の英語表現能力を向上させる一つの有効な方法になりうることを示していると思われる。