表題番号:2003A-608 日付:2005/03/15
研究課題点字の属性が読みやすさに与える影響に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 藤本 浩志
研究成果概要
 視覚障害者にとっては,点字は最も一般的な情報メディアである.従来は基本的に紙を押し出して突起とした点字が主流だったが,近年は樹脂や金属等の様々な材料を用いた点字の技術開発が進んでいる.とりわけ紫外線硬化樹脂インクを用いたスクリーン印刷による点字の場合には,多様な対象物に印刷可能で形状パターンの変更が容易であり,さらに無色透明で製品の外観や下地の墨字印刷に大きな影響を与えないためユニバーサルデザインの観点からも,様々な対象物に印刷され急速に普及しつつある.しかしながら触読しやすさがどのような特徴に影響を受けるのかに関する研究がほとんど無かった.そこで本研究では,紫外線硬化樹脂製インクによる点字(以下,UV点字)の形状に関する特徴が読みやすさに及ぼす影響を定量的に評価することを目的として,実験を行った.
 点字の形状特徴は,点の高さ,間隔で規定される.そこでこれらの特徴を任意に備えた点字を作成できる装置を開発した.点間隔はスクリーン(以下,版)に開ける穴の間隔でコントロールできる.他方,高さは版の厚さと穴の大きさ(直径)によって決まることを確認し,様々な直径の穴が開いた版を作成して刷り上がる点の高さとの関係を明らかにした.ある程度以上の高さの点を作成するために,二度塗りや三度塗りの印刷手法を確立した.また印刷したUV点字の形状を計測するために,非接触型のレーザー変位センサを用いた3次元形状を計測できるシステムを開発した.この方法によって実験に供し得る任意の間隔や高さのUV点字の印刷および確認ができるようになった.
 さらに,これら点の間隔や高さを任意に組み合わせて様々な形状パターンの点字を用いて識別実験を行い,読みやすい条件を検討した.この実験の結果,点間隔については2.9mm,点の高さについては0.4mmあれば十分に確信を持って識別可能であることがわかった.