表題番号:2003A-605 日付:2005/02/21
研究課題脳の性分化に対する植物含有エストロゲン様物質の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 山内 兄人
研究成果概要

1.脳の性分化にたいする新生期ゲニステイン投与効果: 大豆に含まれるエストロゲン作用物質であるゲニステイン(GS)やダイゼイン(DZ)がラットの脳の性分化に影響を及ぼすかどうかみるため、出生5日間毎日1mgを雌ラットに投与して,膣開口日、膣スメアーによる性周期の確認,卵巣の黄体形成、および、雌型性行動であるロードーシスの発現程度を調べた。対照群として、オイルまたは100μgエストラディオール(E2)を投与した。その結果、E2投与ラットの膣開口日ははやまり、性周期は消失した。また,卵巣は小さくなり黄体が見られなくなった。GS投与雌ラットもE2群と同様に膣開口は早まり、性周期が見られず,小さくなった卵巣に黄体がみられなかった。一方、DZ投与群は,オイル投与対照群と同程度で影響は見られなかった。また、E2投与雌はロードーシスの強さが低下した。GS群は対照群より低い値を示したが、E2ほど大きな低下はみられなかった。DZ群は正常であった。したがって、ゲニステインはラットの脳の性分化にエストラジオールより強くはないが、同様の作用をもつことが示された。
2.脳の性分化に対する新生期クメステロール投与効果:クローバに含まれるクメステロール((COM)の脳の性分化への影響を1とほぼ同じ方法で調べた。COM投与はGS投与とは異なり、連日投与ではなく、1mgと3mgを出生5日目のみ1回投与をおこなった。その結果、1mgまたはCOE投与で、E2と同じく、排卵周期が消失し,卵巣には黄体が無かった。ロードーシスに関しては、1mgCOEはほとんど影響がなかったが、3mgCOE群はE2群とほぼ同じ程度に低下した。したがって、クメステロールも脳の雄性化を引き起こす能力があり,ゲニステインより効果が強いことが示された。