表題番号:2003A-601 日付:2005/03/26
研究課題東アジアにおける民族スポーツの観光化変容
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 寒川 恒夫
研究成果概要
東アジアにおける民族スポーツの観光化には、共通した傾向が認められる。それは大なり小なり行政が関わっている点である。韓国慶尚北道清道郡の闘牛は国と地方の行政当局が積極的に関わる好例と言える。ここでは、かつておこなわれたがその後は途絶えていた闘牛を郡当局が地域経済活性化を目的に1995年に復活を議会決定し、これを従来の地域祭礼娯楽にとどめず、国内と国外から観光客を誘致しうる形式として再生させるプランが計画された。それは闘牛を公営ギャンブル化し、郡内に12000人収容の闘牛ドームを建設し、郡内に豊富な温泉を利用して、ギャンブル・闘牛・温泉からなる複合イベントとして国内外に観光客を求め、また、そのためのアクセスの便をはかるため空と海の対外玄関港であるプサンから40分の高速道路をひくというものであった。今日の時点で、公営ギャンブルは国会の承認を得、ドームも大部分が完成し、高速道路も建設に着手され、さらに闘牛を運営する株式会社も立ち上げられ、営業開始を待つまでになっている。
 時に国までを巻き込むこうした地方行政主導の民族スポーツの観光化は、日本では例えば沖縄県が近年開始した闘牛観光化審議会の設置など、各地で展開している。
 他方、行政からは比較的に距離をおいた例として台湾原住民のブヌン族の場合があげられる。台湾台東県延平郷桃源村のブヌンでは、財団法人ブヌン文教基金会の支援で、村内に宿泊所、レストラン、ショップ、歌舞場を持つ文化村が建設され、入村料徴収を含めた運営の一切をブヌン族が担う形式である。彼らは文化村の外に住み、文化村にいわば出勤して彼らの伝統生活を再現して見せるのである。ここには、経済向上と並んで名誉回復が意図されており、伝統生活を観光資源とする少数民族の観光戦略の典型が認められる。