表題番号:2003A-600 日付:2005/03/24
研究課題身体感覚、姿勢、歩行、および呼吸と意識性に関する健康心理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 鈴木 晶夫
研究成果概要
人間は、身体と精神が一つに統合された、全体性をもつ(holisticな)存在であるという考え方は、古くから東洋のみならず世界の各地にみられたが、欧米や日本における近代化の流れは、このホリスティックな存在としての人間の捉え方から、身体と精神を分け、身体を「物」として捉える考え方を作り出していった。医学、とりわけ西洋現代医学においてはDecartesの心身二元論的な考え方が主要な概念として存在してきた。西洋では「心から体へ、心から形へ」という方向であるのに対して、東洋では「身体から心へ、形から心へ」という訓練法が行われている。また、東洋における瞑想法は、ヒンドゥー教、仏教、道教、ヨーガなどの修行法のひとつとして用いられている。
瞑想と関連の深い姿勢と健康意識との関係を検討した鈴木(1996)では、姿勢の自己評価、うつ傾向、健康感、自尊感情に相関関係がみられたことを指摘している。本研究では、特定の姿勢を実際にとることによって、特有の意識性・気分を生ずるという従来の研究結果を受け、「祈り」「瞑想」を考慮に入れた姿勢について対自的な意識性の違いについて検討した。
本研究は7種類の姿勢をとらせたときにどのような意識性になるかを比較した。姿勢の例として、姿勢1は、両足で真っ直ぐ立った状態で目を閉じ、腕を体の横に力を抜いて自然に垂らし、首の力も抜き頭を前に垂らす。姿勢3は、両足で真っ直ぐ立った状態で目を閉じ、腕を体の横に力を抜いて自然に垂らし、腰から上を右方向に45度以上ねじって回転させる。姿勢6は、尻を床につけてすわり、膝を立てて足を手で抱えてすわった状態で目を閉じ、首の力を抜き頭を前に垂らす、であった。これらの姿勢は瞑想をする際の身体の形態的な状態を示している。これらの姿勢に対して25個の形容詞対に5段階でSD評定した。被験者は男女大学生各20名、合計40名であった。平均値プロフィールでは、姿勢1と姿勢6はプロフィールが酷似していた。首の力を抜いて前にたらしていることが、意識性の評定に強く影響している。これらの結果から、姿勢という身体の状態が精神に影響を及ぼすことは明らかである。