表題番号:2003A-598 日付:2005/11/18
研究課題時刻認知の予知行動形成における時計遺伝子の働き解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
マウスやラットに毎日一定時刻の給餌を行うと、動物は餌を得られる時刻に先立って、2-3時間前より活動量が
高くなる。このような行動は毎日決まった時間に出現することから、予知行動リズムという。予知行動リズムは
給餌時間を24時間よりずれた周期で行うと形成できないことから、このリズム形成には体内時計がかかわってい
ることが想定される。ところで、最近の研究から数多くの体内時計遺伝子が見出されてきているが、特にCry1と
Cry2遺伝子の同時ノックアウトは、恒暗条件下に飼育するとリズム性を失うことが知られている。このように
リズム性を失った状態でも予知行動リズムが形成されるか否かについては興味が持たれる。なぜなら、給餌性
リズム形成に従来から知られている時計遺伝子が関与するのか、あるいは違った分子がかかわっているのかを
明らかにすることができるからである。Cry1/Cry2のダブルノックアウト動物を、正常明暗状態出飼育し、
もしくは、恒暗条件にし、視交叉上核に基づくリズム性をなくした状態で、あるいは、視交叉上核を電気破壊し、
視交叉上核性のリズムを完全に止めた状態で、給餌制限した。給餌制限による餌の獲得量には、Wild群と差は
見られなかった。ところが、上の3条件のいずれの実験においても、強弱は存在するものの、給餌制限による
予知行動リズムが形成できた。したがって、このリズム形成には本質的にはCry分子を中心とする負の制御機構は
必要ないことがわかった。つまり、給餌性の予知行動リズム形成には視交叉上核を中心とした体内時計システム
とは異なったシステムが存在する可能性が指摘できた。しかしながら、Wildに比較すると形成が遅くかつ、
不安定なものであった。したがって、正常な予知行動リズム形成には、Cryの時計遺伝子も少なからず、
寄与していると結論した。