表題番号:2003A-580 日付:2013/05/09
研究課題コンパイラ協調型命令レベル投機的実行方式の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 山名 早人
(連携研究者) 21世紀COE(プロダクティブICTアカデミア) RA 斎藤 史子
研究成果概要
命令間の制御依存によってパイプライン処理を滞らせないために,近年のプロセッサでは分岐予測が採用されている.分岐予測は,未解決の分岐命令を超えた実行(投機的実行)を可能とする.一方,近年の命令パイプライン長の深化により,分岐ミスペナルティが増大している.そのため,分岐予測ミス率の低減はプロセッサの性能向上において不可避の課題となっている.

現在までさまざまな分岐予測器が提案されてきた.なかでも,複数の予測表で構成されたハイブリッド分岐予測器は高精度な予測器として知られている.ハイブリッド予測器ではセレクターによる予測表選択手法が予測精度に影響を与える.従来のハイブリッド予測器は,セレクターのカウンタ状態の偏向に応じて予測表を選択する.例えば,Combining予測器では,予測信頼度が高い予測表を選択し,Bimode予測器では,分岐偏向に応じた予測表を選択する.

本研究では、全く新しい分岐予測方法(投機的実行)として、このようなハイブリッド分岐予測器において、セレクターのカウンタ状態の偏向ではなく,カウンタ状態の偏向の強弱に応じた予測表選択手法を提案した。この手法を Confidence-Selectorと呼ぶ。

本分野におけるベンチマークテストとして一般的に用いられているSPECint95(ref入力)を用いて、シンプルスカラと呼ばれるシミュレータにより評価した結果、従来の予測器と比較して12KB Combining予測器では平均5.65%、12KBのBimode予測器に対しては平均0.57%の予測ミス率を削減することができた。