表題番号:2003A-579 日付:2005/02/23
研究課題表面科学技術を応用した次世代型金属回収式バイオリアクターの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 常田  聡
研究成果概要
多くの重金属イオンは生体への毒性が高く,また食物連鎖による生物濃縮が起こるため,金属成分を含む廃水を排出する事業所ではこれを適正に処理しなければならない.特にカドミウム(Cd)については,1955年富山県神通川流域で起こったイタイイタイ病の原因であることから,回収技術の一層の高度化が求められ,排水基準値は0.1mg/L以下という極めて低い値が設定されている.そこで,我々は廃水中の重金属除去技術として硫酸塩還元細菌(SRB)を用いた生物学的金属硫化法を提案した.本研究ではFe-Niスラグウール(FS)を付着担体とした硫酸還元バイオリアクターによる希薄Cd含有廃水処理を試みた.100日間にわたる連続処理実験を行い,安定性を確認するとともに,滞留時間(HRT)を徐々に短縮し,この装置の限界および処理が悪化した際の挙動を調べた.その結果,運転開始直後は処理が不安定であったが,以降100日を越える期間安定したCd除去が行われた.リアクター出口におけるCd濃度は0~0.04mg/L(Cd除去率として99%以上)であり,排水基準値である0.1mg/Lを大きく下回る水質が得られた.また,数学モデルを構築して,連続実験の結果に対するシミュレーションを行い,リアクター内における溶存成分の挙動を予測した.その結果,Cd2+,全有機炭素(TOC),SO42-いずれの成分についても高い相同性をもつことが示され,硫酸還元バイオリアクター内の生物化学反応を適切に表現する数学モデルを構築できたことが確認された.さらに,本廃水処理装置を用いて鉱山廃水を模擬した重金属複合成分系(Cu,Cd,Zn,Ni,Mn)で80日間の連続処理実験を行った結果,Cu,Cd,Zn,Niについては回収率ほぼ100%を達成することができ,各重金属元素の排水基準値以下を達成する良好な処理が行うことができた.