表題番号:2003A-578 日付:2006/11/08
研究課題三重効用吸収冷凍機のモデル化と最適設計に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 齋藤  潔
研究成果概要
 近年,地球環境保全や省エネルギー化の観点から吸収冷凍機の大幅な高効率化を実現する三重効用吸収サイクルの研究が進められている.しかし,三重効用吸収冷凍機の開発には,様々な技術的課題が残されている.特に高温の臭化リチウム溶液による高温再生器缶胴の腐食,高温再生器内の高圧化が大きな問題とされており,未だ実用化にはいたっていない.
 そこで,本研究ではシミュレーションにより,三重効用吸収冷凍機の特性を評価することにより,高温再生器内の低温,低圧化を可能とする設計指針を得ることを目的とする.
具体的には,三重効用吸収サイクルの3つの代表的なサイクルであるシリーズ,リバース,パラレルを対象に,
(1)蒸発器・吸収器をそれぞれ2基とした2段吸収の効果
(2)冷却水経路を通常の実機とは逆に凝縮器→吸収器とした効果
(3)パラレルフローにおける吸収溶液分配比を含むサイクルの最適化の効果
について検討を行う.
三重効用吸収サイクルの最適化計算には,試行錯誤法と外点ペナルティ法を採用する.外点ペナルティ法は,制約条件付き最小化問題を無制約最小化問題に変換し,最適点を導出する手法である.
解析の結果,次のことが明らかとなった.
(1)蒸発器・吸収器を2段とし,冷却水経路を従来とは逆に凝縮器から吸収器へと流動させることにより,COPを0.2以上向上させ,高温再生器溶液出口温度を約30℃低下させ,高温再生器内圧力をシリーズ,リバースフローでは約200kPa,パラレルフローでは約100kPa低減させることができる.
(2)高温再生器出口温度に限界温度を設定し,その範囲で,パラレルフローの溶液分配比を含めたそれぞれのフローの最適点での性能比較を行った結果,パラレルフローは,COPが最も高く,高温再生器圧力も最も低くできる.