表題番号:2003A-571 日付:2005/03/01
研究課題変調赤外分光法による有機半導体表面のキャリヤーダイナミックスの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 古川 行夫
研究成果概要
表面に酸化シリコン層(膜厚,200から500 nm)を作製したn-Si基板を使用して,ポリパラフェニレンビニレン誘導体であるMEH-PPVを材料として,高分子電界効果トランジスタを作製し,ドレイン電圧・電流測定と電圧誘起赤外吸収測定を行った.ドレイン電圧・電流特性の測定から,MEH-PPVはp型半導体挙動を示し,また,ドレイン電流の飽和が観測され,良好なトランジスタ特性を示した.電圧誘起赤外吸収測定から,高分子半導体層に注入されて酸化シリコン界面に蓄積されたキャリアの情報を得ることが出来る.トップ電極型とボトム電極型電界効果トランジスタに関するゲート電圧誘起赤外吸収測定の結果から,同じゲート電圧では,トップ電極型の方がボトム電極型よりもキャリアが多く注入されていることが分かった.トップ電極型トランジスタから求められるキャリアの電界効果移動度は,ボトム型の値よりも大きく,この結果は,赤外吸収測定の結果を考え合わせると,キャリア密度が大きい方が移動度が大きくなるからと考えられる.ゲート電圧に対して赤外吸収強度は比例せず,電圧が大きくなるにつれて,強度増加がゆるやかとなり,高いキャリア密度を得ることが難しいこともわかった.また,ゲート電圧を一定として,ドレイン電圧誘起赤外吸収を測定した.ドレイン電圧と赤外吸収強度すなわちキャリア密度はほぼ相関があり,無機半導体を材料とした電界効果トランジスタで観測されるようなチャネルのピンチオフは観測されなかった.