表題番号:2003A-563 日付:2005/03/24
研究課題ディジタルフォーカス方式による3次元オブジェクト空間の再構成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 本研究では,焦点調節機構のない固定焦点式CCDカメラで撮影した1枚の画像から,計算処理によって3次元物体空間を再構成する新しい画像処理技術を確立することを目的とする。コヒーレントな参照光を用いるホログラフィー技術によって3次元物体の記録・再生が行えることはよく知られているけれども,インコヒーレント光を用いて特別な干渉光学系を用いずに3次元物体空間全体の再構成を行う点で本方法は独創的かつ画期的である。
 本方法の原理は,焦点ずれによる劣化像をデコンボリューションフィルター群に入力し,各要素フィルターからの出力画像に含まれる負値の総和を評価量とし,これが極小となる要素フィルターを見つけることによって物体距離を推定することにある。このことが可能であることは,我々の計算機シミュレーションと冷却 CCD を用いた光学実験の両方からすでに確認されていた。
 本研究課題では,まず,高性能な冷却 CCDではなく,一般に市販されているごく普通のCCDを撮像素子として用いた場合にも本方法が有効であることを,詳細な実験によって確認し,本方法が広い適用範囲をもつことを示した。
 さらに,動的な3次元物体空間を再構成する基礎実験として,光軸方向に運動するモデル物体をビデオカメラで捉えた連続画像に本方法を適用し,物体位置の時間変化を良い精度で計測できることを実証した。今後は,3次元粒子流れや内視鏡被写体空間に測定対象を拡大し,動的3次元空間再構成の可能性について検討していきたい。
 ところで,本方法の原理をビデオ内視鏡や生物顕微鏡の3次元像構成に利用するためには,画像の切り出し(トランケーション)の影響を抑制する必要がある。このため,トランケーション画像から画像復元を行うブラインド・デコンボリューション手法を新たに提案し,計算機シミュレーションによって,その有効性を確認した。この手法は本方法のようなセミブラインド・デコンボリューション法にも適用可能である。