表題番号:2003A-561 日付:2007/03/21
研究課題酸応力環境下におけるGFRP積層板の長期耐久性評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 川田 宏之
研究成果概要
 応力腐食環境におけるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の長期信頼性評価を目的として,水環境下において材料の吸水により生じるGFRP構成機材の機械的劣化とその劣化によるき裂進展抵抗の変化の関係について調査を行った.き裂進展抵抗としては,繊維架橋による高じん化機構における界面劣化の影響を実験的に調査するため,エポキシ樹脂にECRガラス繊維束を2つ埋蔵し試験片とし,吸水による重量変化率の増加による見かけの破壊じん性値の変化を求めた.
 見かけの破壊じん性値は繊維がき裂面間で架橋することによって増加する.実験において得られる高じん化への寄与分の決定には,試験片の吸水による重量増加率が同一となる母材樹脂単体の破壊じん性値と見かけの破壊じん性値の差をとり,母材吸水率と高じん化分の関係を求めた.この高じん化への寄与分は母材の吸水初期状態では増加するが,極値をとり減少を示した.この高じん化分と吸水状態の関係を,繊維束埋蔵位置における水分量の時間変化を用いて評価した.水分量の変化はフィックの第二拡散則に基づいて有限要素解析により求めた.得られた水分量の時間変化と高じん化分の時間変化を比較すると,繊維束部の水分量の増加が開始する時間において,高じん化への寄与は極値をとることが明らかとなった.その時間以後は水分量の増加に従って高じん化分は減少を続けるが,繊維束部における水分量が飽和に至ることで高じん化分の減少も終了し,一定値を示すと考えられる.
 構造材料においては使用される環境への露出時間や環境の状態により,内部における水分量は分布を示すと考えられる.本実験で得られた水分量と高じん化機構の関係は,このような構造におけるき裂進展抵抗を考慮する上で重要である.水分量が飽和することで一定値をとることは,水分の影響を強く受ける環境における長期使用において材料の信頼性を確立することが期待される.