表題番号:2003A-559 日付:2005/03/15
研究課題リンクつき階層多重集合に基づく統合プログラミング言語モデルLMNtal
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 上田 和紀
(連携研究者) 理工学術院 助手 加藤 紀夫
研究成果概要
本研究では、統合言語モデルLMNtal実用化の基盤を固めるために下記の研究を
遂行して多様な成果を得た。

1. プラットフォーム処理系の整備と拡充

研究開発のプラットフォームとなるLMNtal逐次処理系をJavaで実装、公開し、
バージョンアップを重ねてきた。分散処理系への拡張を念頭に置いて、膜ごと
の計算を非同期に実行するための排他制御や協調動作の方式設計および実装を
行った。また可視化機能や他言語インタフェース機能の拡充、プロセス文脈機
能の強化、生成コードの改善などの各種改良も行った。処理系の規模はおよそ
2万行におよぶ。

2. 言語設計の洗練

LMNtalが分散計算を的確にモデル化する言語モデルとなるように、従来の操作
的意味論の一部を見直した。コネクタ(二つのグラフ構造を接続するための言
語要素)に関して、どのような操作を構造合同(可逆)と見なし、どのような
操作を遷移関係(非可逆)と見なすべきかを考察し、従来の言語仕様の問題点
を発見し修正した。

3. LMNtalプログラムに対する型体系の設計

LMNtalプログラムが形成するプロセス構造を扱うための型体系を設計し、型安
全性の証明を行った。この型体系は、膜に出現する可能性のあるアトム(グラ
フのノード)の種類やリンクのつながり方を定式化するものである。本研究を
通じて、実用的な解析のためには、膜に名前を付けて膜の静的な役割を識別す
ることが有効であるとの知見を得た。

4. 分散処理系および小規模制御系向け処理系

膜に実行位置情報を付加する機能を導入し、通信・キャッシュ・ロック・終了
処理等の機構を逐次処理系に付加することにより、LMNtal分散処理系の試作を
行った。また、組込み応用に向けて、センサやアクチュエータをLMNtalのアト
ムとの対応づける方式を考案し、ロボットコントローラ実機上で動作する
LMNtalサブセットの実行系を構築して自律移動ロボットの制御を実現した。