表題番号:2003A-558 日付:2005/02/22
研究課題リラクサーの物理 -ナノクラスター形成がもたらす巨大応答特性-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 上江洲 由晃
研究成果概要
パルスレーザーデポジション成膜(PLD)装置を用いて、次に示すペロブスカイト複合酸化物薄膜の作成を行い。またその構造と物性を評価した。
(1)モルフォトロピック相境界組成をもつリラクサーPb(Sc1/2Nb1/2)O3(PSN)と強誘電体PbTiO3(PT)との混晶系PSN/43%PTのセラミックスおよび薄膜を作成した。まずバルク結晶について、その相図を詳細に決定した。とくにMPBの構造は、Tiの組成比に依存して、非常に複雑な様相―ある場合にはナノスケールのchemically disordered状態―を示すことを見出した。一方、薄膜の場合には、MPBでは単斜晶Pmとなること、しかし基板と薄膜の厚さに依存して、複雑な分域が観測された。また高温では非極性正方晶となることを見出し、バルク結晶とは異なり、950Kまで立方晶にはならなかった。
(2)量子常誘電体SrTiO3のエピタキシャル薄膜を厚さを変えて作成した。この結果、室温ではバルク結晶と殆ど変わらない誘電率は、低温とともに増加したが、10K付近でゆるやかな極大をとったあと減少した、厚さを増すと誘電率の大きさは増加し、ピーク温度は高温側にシフトした。またいずれの場合も著しい周波数分散が観測された。現在、Ginzburg-Landau理論で解析を行っている。
(3)巨大誘電緩和特性を示すCaCu3Ti4O12(CCTO)とCaTiO3からなる多層膜の作成および電荷整列ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜Pr0.7Ca0.3MnO3(PCMO)膜をエピタキシャルに成長させた。特にPCMOにパルス電場をかけると、光学反射率が同様に不揮発かつ可逆的に変化する現象を発見した。これは新しいタイプの光スイッチ、光メモリーとなりうるものである。